テトアンの街から西へ10数キロ行くと地中海がある。そこにマルティルの街がある。
ややきれいなビーチが北の方に10km以上つながっている。
マルティルは夏ににぎわう街で、海水浴客でごった返している。冬は寂しい限り。
カサブランカやラバトなどのリゾート地と違って海の表情が違うような気がする。
地中海と大西洋では海の荒れ方ははるかに違うだろうから、風一つにしても違う。
日本人にしたら何てことないこんな小さな街は意外と日本人と関係があった。
20年くらい前からこの近海で日本の水産会社がクロマグロを養殖していた。
これを日本にいっぱい輸出していた。日本で冷凍のクロマグロとなるといくらかは
モロッコ産のクロマグロだった。たぶんあまり知られたことではないはず。
かつてモロッコで、この水産会社の方にマグロの尻尾の切り落とした部分をもらった。
切り落とした尻尾の部分と思うけど、でかいクロマグロの尻尾はけっこうでかい。
この尻尾だけでも刺身で食べるとけっこううまかった。煮ても良かったけど
何といっても刺身がうまかった。市場でセリをする時のマグロの尻尾はないはず。
そのなくなっている部分と言うか、捨てられる部分のクロマグロの尻尾だった。
こんなうまかったクロマグロはホントは高いはず。どれくらいの値段になるかは
教えてくれなかったけど、当時の話で一匹のマグロが日本で市場に並ぶ時、
このクロマグロを飛行機のファーストクラスで日本に送っても採算がとれる
くらいの値段だったようだ。うまいはず。イギリスで起きた狂牛病などの関係で
各国が魚を食べることが多くなり、そのあおりを受けた日本は漁獲制限もあり、
日本人が地中海のクロマグロを食べることは少なくなった。今は日本ではマグロと
言ってもほとんどが小型マグロ。クロマグロが獲れていたマルティルからセウタに
かけての地中海沿岸はいいところ、こんな田舎町に日本人がいたんです。
この街で特においしいものがあるわけでもなく、これといった観光地があるわけでも
ない。そんな街を通過するだけでも「かつて日本人がこのまちでクロマグロを日本に
輸出していた」という思いを感じてみてください。