フェズの王宮正面の門のゼッリージュ(モロッコタイル)は素晴らしい。ラバトの
モハメッド五世廟の装飾ができた後に更に技術を進化させた作りだ。モロッコの中でも
フェズの場合は違ったゼッリージュを目指している。フェズのタイルが目指している
のは「フェズ ブルー」の色をどのように発色させるか?がある。フェズは陶器の
色も「フェズ ブルー」と言う言葉があるくらいブルーにこだわる。下の写真でも
王宮正面のゼッリージュでブルーに近い色を集めてみた。けっこうある。
フェズのブルーを出すのにその都度、職人が試行錯誤して色を出しているようだ。
ある時、聞いた話では釉薬の色をもっと変化させるためにオリーブの実や枝を一緒に
燃やすと違うらしい。また、オリーブとは別に顔料の割合調整も試しているらしい。
写真では分かりにくい各ブルーの色相。緑に近いのもあるがそれなりの色だ。フェズの
職人のこだわりを見てもらいたい。立派なものがある。
また、王宮正面のゼッリージュは図柄も新しいモノがある。例えば左上写真の中にある
鎖状の図柄の中にハート状にタイルの線が絡み合っているのがある。ペイント装飾では
古くからあったようだけど、タイルではなかなか見ない。この他の図柄も古典的な
スタイルではあるが、その一個一個を崩したデザインで、新しいモノができた。
これが1990年代から以降はこれらのデザインがよく見られるようになった。
上の左写真のタイルは普通に見ると何ら変化もないようなスタイルでどこにでもある。
しかし細かく一個一個のタイルを見ていくと、今まで使ったことのないピースがある。
使ったことのないピースがあると言うことは、図柄が少しづつ変わっているという
ことになる。また、上右の写真のサッカーボールのような突起物は今まではなかった。
このように少しずつ新しいものができていった。
こうした図柄ができる背景には、前国王のハッサンⅡ世のお抱え建築家であった
アンドレパッカードの存在があった。彼の創作意欲は少しづつではあるが、伝統的な
モロッコ様式アラベスクを保ちつつも結果的には大胆で明るい空間を作りだした。
今までのモロッコ様式アラベスクは見た目はにぎやかな感じがあったが、いまとは
全然違う。現在のモロッコタイルは今どきの言い方をすると「インスタ映え」する
ようになった。
下の写真の中にはそれなりに新しいデザインが多く組み込まれている。
フェズへ行った時は、メディナだけでなく王宮の正面玄関をじっくり見ては!?