ムーレイ・イスマイル廟内の中庭になる水盤。今回これに注目してみる。
宗教施設の中庭には必ずある水盤。モロッコの水盤の中心部分は大理石製が多い。
水盤は真ん中に水をためて使っている。モスクなどの宗教施設の場合はこの水を
利用して、手や腕そして顔などを水で清めることに使う。
写真で分かるようにムーレイ・イスマイル廟の水盤はやや小ぶりな作りになっている。
上の写真で水盤の下にコップは水を汲んで口を清めたりする。ここの水盤は周りを
ゼッリージュのタイルで装飾して中心部分が特別な場所のように設えている。
水盤の大理石はモロッコ産のものもある。モロッコにも大理石の石切場がある。
産出量は不明。この水盤のように遠目で見れば白だけど、近くで見ると
はちみつのような色をした小ぶりの大理石がよくある。これがワルザザート方面の
モロッコ産大理石が使われることが多い。しかし、大きめのはっきりした白い綺麗な
大理石はイタリアのカラーラ産のモノがほとんどだ。
水盤の形態として、フェズやメクネスなどでは写真のような水盤を見ることが多い、
しかしマラケシュでは水盤を使わずにプール状に水を貯めるところもある。一概に
地域性があるわけではない。
また、一般家庭にはこの水盤はない。今では立派なリアドなどにその名残がある。
かつては、メディナ内では宗教施設のためや公共水道のための水利用として水が
大切にされていた。その時に有力者の住宅や水道を作るために寄付した人の住宅に
水道が流れていた。そこの住宅には水盤がある家や壁から水が出るようにしてある
住宅もあった。これが今では高級リアドになっている。高級リアドでも
リアドにする前は大理石の水盤は少なく、壁タイプのゼッリージュ仕様が多かった。
また、モロッコで水盤が多く使っているところは王宮だ。
ラバトの王宮だけでなく、各まちの王宮の水盤とその周辺は立派な仕様になっている。
たとえはメクネスの王宮の水盤は水盤に合わせてプール状の水たまり場もある。水盤と
水たまり場の間は小さな水路が流れていて水の流れる風景を楽しめる。
「水」を大切にしたモロッコのメディナでは主要なところにある水盤の存在は大きい。
例えがいいかどうかわからないが、砂漠の民がオアシスを求めるような感覚だろうか!
水盤を利用しているモロッコ人の風景を見れるのが、フェズのカラウィーンモスクで
水盤から水を汲んでいるモロッコ人を見ることができる。
ちなみに、この水盤からの水は日本人は飲まない方がいい。