フェズの世界遺産でも、けっこうな見どころの建物であるマドラサ・ブー・イナニア。
建物の詳細はどこを見ても素晴らしい。しかし、修復部分には変な部分も?!
このマドラサの修復されている部分をしっかり見た人もいるはず。「なぜここから先は
装飾がないの?」と思うような部分を見ることがあるはず。下の写真の左側の漆喰の
白い部分が真平らになっている。全く装飾されていない。右側には模様がしっかり
あるのに真ん中から左にかけて何もない。なぜこのようなことが発生したか?
フェズが世界遺産に登録されたのが1981年。約40年前のこと。その頃はけっこう
朽ちていた。最初に見たイタリア人建築家も危機感を感じ修復の必要性を訴えた。
その後いろんな国の国家元首がモロッコを訪問して、多少の修復費用を出してくれた。
その都度、修復は部分的に行われていたのは確かだ。また当時の体制も問題だった。
モロッコ文化省の国家予算を合わせても全体で修復ができる金額は少なかった。予算は
もらったものの満額修復にはあてられなかった。当時のモロッコは大臣がや次官が
予算をピンハネし、ピンハネを見た他の役人もピンハネして修復費用には少量の
予算しかなかった。全体が修復されないまま、大事な文化財は元の原型が分からなく
なるくらいになってしまった。こうなると修復が大変だ!復元が難しい。
そんなことが続き、モロッコの重要な文化財はモロッコ文化省だけではどうしようも
ならなくなり、ユネスコの専門家と協議し、修復不可能な装飾は無理に修復しないで、
何もしないことになった。その結果が下の写真左側のような白い平らな壁になった。
間違う可能性がある修復はやめることにした。
このような平らな部分だけでなく、立派に修復できている部分も多くある。
このブー・イナニアを見る時にはその時代背景も多少気にして見てもらいたい!
下の写真はこのブログ内でよく出てくる天井部分の「ムカルナス(鍾乳石装飾)」。
このムカルナスはマドラサ・ブー・イナニアの出入口の天井にある。あまり注視する
ような天井ではないので、見ないまま去ってしまう人もいるかもしれない。
木製ムカルナスで、表面上は綺麗な塗装がされていたとしかいいようがない。しかも
このサイズのムカルナスはモロッコでもそんなに多いモノではない。それくらい立派!
モロッコのこのムカルナスは鍾乳石飾りとはよく表現したもので、感心する次第だ。
これと同じようなものが中東にもある。しかしどう見ても鍾乳石飾りではなく、角を
えぐったような、フライイングバトルを変形させたような何とも表現しようのない。
作る過程の素材(木か石か漆喰か)の問題もあるのだろうが、見え方が違うのは
自分だけだろうか? モロッコのムカルナスを堪能してください。
この上の写真のムカルナスを見て、この天井裏はどうなっているの?と気になって
天井裏を見たら下のような写真の状態だった。張りぼてどころではない。立派に
木材が組み合わさっていた。日本にはない作りだけど、今どきの日本で作るとしたら
張りぼてか、古典的に作るか両極端になりそうだ!
モロッコの伝統文化をよく見て下さい。おもしろいモノを発見できるかも!