マドラサ ブー・イナニアにあるムカルナス。ムカルナスを紹介しよう!
ムカルナスは日本語で表現すると「鍾乳石」と訳されている。天井によっては
「ハチの巣」と言ういい方もするようだ。それをイメージしてもらうといいかも!
下の写真を見ると鍾乳石のように垂れ下がっている装飾がよく分かる。これが
どれくらいの大きさかはその下の写真を見るとよく分かる。
この上の写真にあるムカルナスは幅が60cm位で間口が2m位のところの
入口アーチの天井部分に装飾してある。このムカルナスはモロッコではまるで
小宇宙の世界のように作り上げ、漆喰装飾を代表するような表し方をしている。
イスラム建築の意匠ではこのムカルナスは外せない装飾になっている。
中東や中央アジアのイスラム建築では大きな天井に組み込むことが多い。だから
ムカルナスのスケール感も大きいし、材料そのものも石やタイルなどを使っている。
しかも屋根を支えるための建築構造も兼ねていることがある。モロッコとは違う。
モロッコの場合はアーチ部分や壁の一部分にはムカルナスの漆喰が多いし、また
ドームのような天井に使ったとしても木製の組木をつなぎ合わせてムカルナスを
作っている。モロッコの場合、建物の構造に影響する作り方はない。根本的な話で
モロッコでは建築構造に使えるような石材はなかった。だからモロッコの建築は
大きなものはなく、小ぶりなものが多い。その分と言ってはおかしいが、
他より優れた装飾の世界が確立して今日に至っている。
だから、モロッコは細かい装飾に特化していった。漆喰の工夫、木材が豊富にあるため
それをもちいた装飾でモロッコ建築様式を確立していった。ムカルナスの作り方として
漆喰の場合は大きなアーチをだいたい作り、そこから彫り込んでいく。
これは根気がいるし、経験がないとできないし、なかなかびっくりする作業工程だ。
まるで彫刻の一種だ。この様式をマグレブでひとくくりにするけど、アルジェリアや
チュニジアではここまで細かい装飾はほとんどない。
下の写真は全体像を撮った写真、上の写真は部分的に接写した写真。
細かく見比べてみたら、その表現方法の詳細が分かるはず。
この漆喰をどこでもいいから細かく見ていくと、時々漆喰の穴の中にハチがいたり、
昆虫が出入りしていることもある。春や秋に昆虫の姿を見ることができるかも?!?!
今回、これはムカルナスの漆喰装飾に焦点をあてているが、また別な機会に木製の
ムカルナスのすばらしさを紹介したい。