マドラサの漆喰に注目してもらいたい。これらの漆喰はモロッコ人漆喰職人の技が
素晴らしいモノがある。同じイスラムの国でもここまで出来るところは少ない。
中庭の正面脇にある漆喰。下の壁タイルから上の漆喰までを紹介する。下写真の中の
赤い数字は各拡大写真の部分を示している。
1:腰壁の帯状のタイル部分 2:1の上にある漆喰
1:黒字の四角いタイルにアラビア語のコーランを浮だたせる様に形取っている。
伝統的な手法でタイルを削っていくのと同じように、黒いタイルをベースにして文字を
けがき、それに沿って黒だけを残していく。腰壁の上にこの装飾を施すことは
よくある。字体はこのパターンが一般的で、タイル同士の組み合わせは間違いが
ないようによく出来ている。
2:ここからが漆喰になる。写真の中に横に長い線のようなものが見える。これは
モロッコ独特の装飾書体でコーランを書いている。彼らのレタリングの手法は
独特のモノがあり正則アラビア語を崩した形で「マグレブ書体」とでも表現した方が
適切かもしれない。数種類の書体を持ち、表現している。
3:下の写真はアーチのある窓をモチーフにしてその中に各種の装飾を表している。
真ん中の窓の中には小麦の穂や松ぼっくりをモチーフにして形取っている。
その周りにはパターン化した彫り込みがある。この真ん中の部分の彫り込みに深さの
違いを設けて、陰影があるのがよく分かる。
4:下の写真はアーチのある窓状の部分の装飾は下の装飾に比例したデザインだ。
この窓状の上のムカルナス(鍾乳石飾)の漆喰はモロッコではよくある。
他のイスラム圏のムカルナスは石造や陶器などで出来ていることがほとんどで
スケールが大きい。しかし、モロッコのムカルナスは漆喰で彫り込むか木製の
組み合わせがほとんどだ。スケール感はどうしても小さく見える。しかし細かさは
他より立派だ。下の写真のような状態が多い。一般的に建物の角の天井部分や
アーチ下部に装飾するがここでは壁面の平面的な部分に作ってある。珍しい。
この漆喰をどのように作っているか? 施工しているかだ!
まずは漆喰を塗るための素材。石灰を細かくしたものをなじむまでよく混ぜる。
そこに水を入れて練り込み、壁に手て塗っていく。ある程度、粘性のある状態で壁に
塗り付けていく。日本の場合は塗り厚は3~5mmがほとんど。モロッコの場合は
30mmくらいが一般的。彫り込む面を平らにする。しばらく乾燥させてから彫込む。
完全に乾燥する前で、程よく柔らかいうちに彫り込み作業の段取りをする。
彫り込む前に彫り込む形を選定して、その形の台紙があるのでそれを平らなところで
張り付けて彫刻刀のようなもので形取っていく。そこからは時間をかけて丁寧に彫る。
アッツアイ(モロッコミントティー)を飲みながら彫るものもいる。彼らの真剣な
表情はなかなか見れるものではない。もし見る機会があったらのぞいてみたらいい!
しばらくすると、立派な彫り込み装飾ができる。
モロッコの漆喰をどのように見ているか分からないけどじっくりと見てみたらどうでしょう!