「バヒア宮殿 見どころ」でも紹介したムカルナス。イスラム建築の独特の技法。
上の写真のムカルナスはマドラサ・ベンユセフ(Medersa Ben Youssef)のある一室の
天井に設置してある。日本語で鍾乳石飾りとはよく表現したものだとよく感心する。
このムカルナスの技法でモロッコでは木製と漆喰があると説明した。このメデルサの
ムカルナスは木製なのかははっきりしない。その理由は直接まじかで見てないし、
触ってもいないので確認できていない。しかし、このムカルナスは木製でその表面に
漆喰なり、ペイント装飾が施してあると見た。たぶん! それとこれくらいの面積の
天井を漆喰て装飾するとなると下地を何で作るか問題になる。それを考えると木製が
間違いないし、まだ作りやすい。下の天井裏の写真を見るとよく分かる。
一般的にはムカルナスは建物の天井の隅、壁面の一部などに設定することが多い。
天井を覆いつくすように設置してあるムカルナスはそんなに多くはない。スペインの
アルハンブラ宮殿の一室の天井に上の写真より大きなムカルナス天井がある。
モロッコではラバトの王宮にあるけど、写真でしか見たことがない。それくらい
ムカルナスで天井を覆うことは珍しいし、難しい!
ムカルナスだけに限らず天井に何らかの意味を持たせることはあるのだろうか?
例えば、日本の部屋はほとんどが用途が決められている。それに従って天井の
作りも違ったりする。極論では日本の茶室の天井は主客、もてなす側、それ以外の
方々で座る位置が違ってくる。茶室以外では城主の殿が座る位置と、それ以外で
天井の作りが違っていた。部屋に入るなり自分が座る場所は決まっていた。
モロッコでは部屋の用途の違いはあっても、ひとつの部屋で役割が分かるような天井の
作りを表すことはないようだ。ムカルナスの作りはイスラム教の影響もあり、
「神」を意識し、神に近くなる、神が宿る、神と一体化するなどの精神があり、
天井の装飾の美をとことん突き詰めた結果が今日に至っているようだ。
だから、ムカルナスを空の宇宙観、幻想的な原子論的宇宙観と表現する学者も
いるのだろう! 当然、日本とは違う!
上の写真はフェズのマドラサ・ブー・イナニアのムカルナスの天井裏の風景。
ブー・イナニアの入口にある天井のムカルナス。ムカルナスの表面をまじまじ見て
帰る日本人は少ないであろう! 下手すれば、日本人には、たぶん装飾が気持ち悪いと
言って見ない人もいるだろう!
上の写真をしっかり見ると天井裏では木組が入り組んでできているのがよく分かる。
木製の場合、10ピース位を組み合わせて作り上げていく。この道に熟練した職人が
木を削り込んで組み立てて、下から見える形に組み込んでいく。けっこうな技量が
ないと出来ない作り方だ。写真では天井が落ちないように支えているのもよく分かる。
ムカルナスをじっくり見て下さい!