フェズには注目されないマドラサ(神学校)がある。その名はフェズのメディナの
東側にあるアンダルス モスクの隣のサフリージュ・マドラサ(Medersa Sahrij)だ。
下の写真は修復される前の状況。約十数年前。この状態がしばらく続いた。
モロッコ行政側もこれではよくないと思い、修復に乗り出した。しかし、モロッコの
各省だけの予算ではどうにもならず、確か、イスラム開発銀行からの借金で修復しよう
とした。しかしその予算も使い果たして完全修復はできていないはず。
下の写真で修復が大変な状況を見てもらいたい。
この中庭の風景を見て、建物の専門職ならすぐにわかるはず。建物がゆがんでいる。
このゆがみを修復するには簡単ではなかったようだ。表面上の修復をして、工事を
済まそうとした。しかし、しばらくしてその歪みの影響が出てきた。
下の写真(左)は柱部分の漆喰が劣化した状況。漆喰の復元がかなり難しい。
部分的には修復しても全体像がつかめない状況。
下の写真(左)はミハラーブ(メッカのお祈りの方向を示す場所)へ入る扉下の部分。
床にある丸い穴は扉の回転軸を差し込むところ。扉そのものは倒れる可能性が
あったので外してあった。丸い穴の上に延びている木製の枠、この部分も腐食や
劣化が進んでいて交換が必要になっていた。この表面の装飾の表面だけでなく、
内部まで腐っていて復元はかなり時間がかかりそうだった。
下の写真(左)は中庭の状況。床のゼッリージュ(モロッコタイル)はほとんどの色が
あせてしまい、交換しなくてはいけない状態。それと水盤があったけど、それも
無くなり、どのように修復するか?それとも復元しないのかとなっていた。
下の写真(右)はミハラーブ部分。かろうじて修復が少なくて済むように見えるが
周辺の壁の傷み方はかなりひどいモノだった。修復中に良好な壁の方が崩れ
落ちそうな状態になっていた。
下の写真(左)はまぐさ部分。この木材の表面に何が装飾されていたか、想像もできない
くらいに表面が朽ちていた。かなり難しい状況。木材の端部も腐食して復元不可能だ。
下の写真(右)はゼッリージュは剥がれ落ちている。しかしこれくらいだとまだ復元は
できるが、周りとの色あせの問題で全体を修復しなくてはならない。
これらは部分的ではあるが、修復復元にはかなりの時間と費用がかかる。
資金面ではイスラムの宗教施設と言うことで、日本同様イスラム圏以外からは得難い。
となるとクラウドファンディングみたいにしても資金が集まりにくい。
とりあえずは、いま公開しているブー・イナニアとアッタリンのマドラサを
見てもらうしかないのが現実だ。
今後、マドラサ・サーリージュの修復を期待したい!?