モハメッドV世廟の外壁は白のカラーラ大理石を全面にはりめぐらしている。
公開することを前提で作った建物。カサブランカのハッサンⅡ世モスクほどの派手さは
ないけど、モロッコでこれだけの大量の大理石を使った外壁の建物はここだけ。
1973年に完成したこの廟ではあるが、表面の劣化とかは見当たらない。
正面のアーチの上にある菱形網目模様の彫り込みはこれだけの大きさで大理石で
出来ている。このも要は敷地内にあるハッサン塔の上部に同じ菱形網目模様がある。
これを意識して作ったと思われる。これくらい大きな菱形網目模様はメクネスの
マンスール門などでも各所で見ることができるが、土などを混ぜた漆喰で出来たものが
ほとんどだ。また小さい菱形網目模様はタイルで作っていることが多い。
大理石でこれほどのモノを作ったことはなかった。柄は伝統的な図案になっている。
アーチの部分は葉形くり込みアーチといいモロッコではよく見られる手法だ。しかし
ここの特徴は葉形くり込みを壁の表から裏までくり抜いている。一般的には表面だけに
施すことが多い。
下の写真は公開していないもう一つの建物の入口にある小さな門。
これもカラーラ大理石で出来ていて、細かい彫り込みがデザインされている。
今までにあまり見たことのない絵柄だ。サレ生まれのベン・タニという
石工が深く関与して作り上げた。彼はモスク内にある水盤をはじめ、ラバトにある
高級ホテルなどでも石工として腕を磨いていった。その業績が認められこの廟の建設に
携わるようになった。細かいところがよく出来ていて、素晴らしいところがある。
左下の写真はカラーラ大理石ではないがグリーンの大理石に菱形網目模様を組み込んで
あり、色合いが違うためちょっとしたアクセントになっている。
右下の写真はサレで採掘されて、rose stone という石でモロッコでは柔らかい石だ。
大きな門などに使われていることがある。門の角にこの貝の模様がよくある。
ここでは貝は強調されていないが、ウダイア門の貝は他より飛び出すように強調して
彫られていることがある。
建物は決して大きくはないが、デザインや装飾のスケールの大きさは一番かも!