この廟の天井の装飾は素晴らしい。長方形の天井枠の台に十二角形の丸い屋根が
かぶさっている。中央の丸い天井部分には各所に明かりを入れるブルーのガラスが
組み込まれている。このスタイルをモロッコでは「クッバ(qubba)」という。
四角い台の上に丸を組み合わせたことで四隅に綺麗なムカルナスを施している。
モロッコではこれを作るのに木材を使っていることが多い。中東などのモスクでは石を
使用してボールト状に組み合わせていくことが多い。モロッコではそれに相当する石の
産出がない。それとモロッコにはアトラスシダー(マツ科ヒマラヤスギ属の一種)が
アトラスの中腹に生えている。このアトラスシダーは「神聖なる木」とも言われ、
その由縁もあり、モスクなどの宗教施設の天井に使われることが多い。家具類もある。
このモハメッドV世廟の天井にも木を組み合わせて作っている。
ここの天井には下の台座の部分には直線状を用い、トップの部分は曲線でできている。
幾何学の彫り込みとペイントによる装飾がまんべんなく、隅々まで手を尽くしている
のは写真でよく分かる。今までの天井の作り方は一般的に表面の彫り込みの凹凸は
あるが、ここの天井は彫り込みに加えてかなり多くの装飾品が飾り作られている。
それと、表面上の金色は金箔なのか、メッキなのか、ほかの材料なのか不明。
下の写真は天井を見上げたところ。天井の一番奥の部分は伝統的な手法でできた天井で
平面上の天井に幾何学模様を施してある作り方。
下の写真は出入口の前にあるポーチ部分の天井を見上げたところ。
この天井は板を彫り込んだものでなく、木を組み込んだ作りのタイプ。彫り込むより
重厚感が増して見える。模様は伝統的な幾何学模様の一種(外壁と同じ種類)で中央の
天井(一番上の写真の天井)と違い、天井には付け足しの装飾品は一切ない一般的な
作りになっている。モハメッドV世廟の特徴の一つになる。
これらの天井の作り方はマラケシュの王宮(見学不可)にはいろんな手法を用いた
天井がある。よくここまで作り上げたと思わせる天井もある。王宮以外ではフェズや
マラケシュの伝統のある家系の住宅でも見ることはある。
メディナを旅して、もしそのような方に出会えて見ることができたらラッキーかも!
「すごいね」だけで終わらずにじっくり見てはどうでしょう!!