ムーレイ・イスマイル廟の門。立派な作りで伝統的な様式で風格のある門構えだ。
今回この門の「扉」に注目してみたい。日本でも社寺の門に大きな扉があるように
モロッコの大きな建物の出入口には大きな扉が取り付けられていることが多い。
モロッコのこの手の扉はほとんどが木製で出来ている。近年は多少違っている。
大きさとして高さが3mを越える扉が多い。開き方は両開きが基本的。その扉に
くぐり戸を設けて、通常、人はここからの出入りしている。扉についている金物は
扉の表面にはドアノッカー、振れ止め金具、板の止め金具が取り付けられ、
内側には振れ止めの金具がある。
上に写真の門の全体装飾は砂岩(スフロー方面産)を彫り込んで装飾されている。
アーチの形状はモロッコ独特の馬蹄形アーチ、そのアーチの上には鎖型模様がある。
またその周辺には唐草模様のアラベスクが彫り込まれている。門の両脇の上にある
貝殻模様の形はvisigothc時代の貝をモチーフにして作ったと伝わる。
両脇にはモロッコ産白い大理石。頭部の横に白部分はアラビア語でコーランが
書かれたタイルになっている。
下の写真に扉の表あるドアノッカー、振れ止め金具、扉の板を止める鋲がある。
扉の裏にも振れ止め用金具がある。このとびらを動かすのに蝶番は使わない。
日本の社寺の扉と同じように回転する吊元部分の上下に軸受けがあり、
そこを起点に扉の開閉を行う。
下の写真はこの廟内の扉で、モロッコの伝統的様式の装飾が施してある。扉は木製。
表面の模様は板の上に彫り込んで、ペイントしていく。図柄としてはタイルの
ゼッリージュ仕様と同じようにパターンがある程度決まっている。この模様は12割を
基本にして広がっていくタイプの模様。両脇にはソロモンシールの模様の葉。
下の写真はモロッコの扉のおもしろいところ。扉の回転軸のキャップの装飾部分。
日本の社寺ではここまでの装飾は自分は見たことはない。雲のような模様はある。
モロッコではこのキャップ部分をデコレーションする。木製でその作りは屋根があり、
屋根の上の丸い飾り、瓦のような作りの屋根があり、その下にはムカルナス
(鍾乳飾り)に似た突出した部分、その下には窓のような飾り、すべてを造作し、
ペイントで飾られている。この小さい世界感が実におもしろい。
この小さな軸上の装飾なのに、ここまで作り上げると「いいね!」って感じかな?
モロッコではシャシア(shashiya)と呼んでいた。旧宮殿や廟などで見られる。
マラケシュの旧宮殿ではいろんなシャシアがある。